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【呪術廻戦】伏黒の領域展開「嵌合暗翳庭」の異常性を考察

呪術廻戦171話、領域展開に関する設定がたくさん開示されてテンションが上がりますね!伏黒の領域展開「嵌合暗翳庭」についても、未判明だった情報がたくさん開示されました。

(↑記事のサムネ画像を合法的にそれっぽいのにしたいがためのプライムビデオへのリンクです…)

 

しかし、171話のいろいろな感想を巡っている中、「領域展開」について誤解している人が多いと感じました。

 

私自身も171話を読み返していて「自分の解釈が正解だと断言できないな…」と思ったのですが、自分の考えの整理のためにも、改めて「領域展開」の設定、仕様について解説、そしてそこから見えてきた伏黒の領域展開の異常性について考察してみたいと思います。

 

なお今回、情報元を原作本編+単行本おまけページの解説のみとしました。ファンブックの情報は(持っていますが)考慮していません。

領域展開による効果

「領域展開」の効果は、作中で以下のように説明されています。

五条悟:

これが「領域展開」 術式を付与した生得領域を呪力で周囲に構築する
領域を広げるのはめちゃくちゃ呪力を消費するけどそれだけに利点もある
1つは環境要因によるステータス上昇 ゲームの「バフ」みたいなもんだね
もう1つ 領域内で発動した付与された術式は 絶対当たる

――呪術廻戦 15話より

七海健人:
呪力で構築した生得領域内で必殺の術式を必中必殺へと昇華する
私の到達できなかった呪術の極致

――呪術廻戦 30話より

 

まとめると、領域展開の効果は以下の2つ。

 

 ①:環境要因によるステータス上昇

 ②:領域に付与した術式が「必中」になる

 

領域展開の使い手である五条のセリフのほうを正解とするなら、15話の時点で「領域展開自体には必殺の効果はない」ということが説明されていたということになりますね。

伏黒の領域展開「嵌合暗翳庭」は、この2つの効果のうち

 

 ①:環境要因によるステータス上昇

 

のみを持っている、ということが171話で明かされました。

 

領域展開のやり方

では続いて、領域展開のやり方についてを見ていきましょう。

領域展開のやり方・手順についての作中での描写・ヒントは主に以下のところでしょうか。

 

基本的に呪力が一定量あれば努力次第でできなくもない(向き不向きがすごい)。
自分の中に術式を0から構築、言霊を乗せて、呪力を流して発動。

“帳”のことを指すことが多いけど『領域展開』も結界術の要素がいっぱいだよ。

――呪術廻戦10巻「ちょっと何言ってるか分かんない術式まとめ」より

「伏魔御廚子」は他の者の領域とは異なり結界で空間を分断しない
結界を閉じず生得領域を具現化することはキャンバスを用いず空に絵を描くに等しい

――呪術廻戦 119話より

真人:
結界術は複雑だ

――呪術廻戦 129話より

生得領域の具現化と術式の発動 本来2段階の工程を1つにまとめる

――呪術廻戦 130話より

 

これらの描写から、領域展開には実行時に3段階のステップがあると考えられます。

 

 ステップ①:結界術で空間を分断
 ステップ②:①で分断した空間内に生得領域を具現化
 ステップ③:②に(必殺の)術式を付与→術式を発動

 

なのでまず大前提として、「ステップ①:結界術で空間を分断」ができなければ「領域展開」はできません。

真人の例

領域展開習得・発動までの過程が最も丁寧に描かれているのは真人です。

真人の描写に注目すると、領域展開がどういう手順を踏んで習得するものか見えてきます。

真人はまず25話で“帳”を降ろしています。

このとき「おー できたできた」とのセリフから、真人は“帳”あるいは「結界術」をここで初めて実践したのでしょう。

またこのシーンでは真人の隣に羂索(偽夏油)がいて、羂索が真人に“帳”を降ろさせています。羂索は「天元に次ぐ結界術の使い手」で、うずまきによる術式抽出を目的として真人を成長させようとしている描写が作中で見られます。羂索によってプロデュースされた真人は領域展開取得への最短ルートを通っていると考えられます。

そして29話で死を感じながら「今ならできるよね」のセリフの後、領域展開を発動します。
この「今ならできるよね」のセリフ、臨死体験をしたことに加えて“帳”を降ろせた=結界術を行使できたということにもかかっているのではないでしょうか。

渋谷での虎杖・東堂戦でも「結界術は複雑だ」というセリフをわざわざ言っている以上、領域展開には「結界術の取得」がそもそも大前提であると考えられます。

 

五条悟:
結界術は難しいからねー強くてもできない奴は結構いるよー
僕は両方できるけどね

――呪術廻戦 86話より

 

蝗GUYが帳を降ろしていることに疑問を持った虎杖の回想中の五条のセリフです。
五条のセリフの「両方」が、結界術のことであるならおそらく“帳”と“領域展開”の2つを指しているのだと思います。

そしてこの描写から、呪術廻戦という作品内において、「結界術は難易度が高く、使い手が少ない」という設定であることが分かります。

 

伏黒と結界術

では、作中でも貴重な「領域展開」の使い手である伏黒恵は、結界術が使えるのでしょうか?

伏黒と結界術についての描写は、伏黒が初めて領域展開をする「起首雷同編」にあります。

新田明:

呪霊が確認でき次第“帳”を下ろすっス

――呪術廻戦 55話より

伏黒恵:

術式を付与した領域を延々と展開し続けるのは不可能だ
となるとこの結界は少年院の時のような未完成の領域だ
今回は逆に助かった “帳”の必要がない

――呪術廻戦 56話より

 

この2つのセリフから、伏黒は自力で“帳”が降ろせない、ということが分かります。

自力で帳が降ろせない=新田の力を借りる必要があるので、単独で呪霊を祓おうとしている伏黒は「助かった」と思っている・呪霊の未完成の領域は結界術で外界と分断されているので秘匿の必要がない、ということです。

またレジィ戦で領域を展開する直前でも、伏黒は自ら結界術を苦手としていることを明かします

 

伏黒恵:

結界術ってのは難しいよな
いつまでたっても現実空間にスケールの異なる疑似空間を重ねる感覚がつかめない

――呪術廻戦 170話より

 

つまり伏黒は、現時点で結界術を苦手としており、結界術未習得です。

そのためレジィ戦では体育館という「物理的に分断された空間」を領域展開における「ステップ①:結界術による空間の分断」の代わりに用い、そこに直接ステップ②である「生得領域の具現化」を行っていると考えられます。

伏黒の領域展開が「結界術を用いていない」という根拠は171話にもあります。

 

「彌虚葛籠」や「簡易領域」は術式そのものを中和することはできない
これらは術式の付与された結界を中和することで
付与された術式の必中効果を無効化している
体育館の空間を自らの領域として転用することで無理矢理閉ざした結界には
必中の術式は付与されておらず
「嵌合暗翳庭」は現時点で十種影法術を拡張し 潜在能力を120%引き出すためのものにすぎない

――呪術廻戦 171話より

 

レジィの「彌虚葛籠」は「結界術によって構築された結界」を対象に中和、延長として「結界自体に付与された術式の必中効果を無効」にするものですが、伏黒の領域展開はそもそも必中の術式の付与(領域展開のステップ③)がされておらず、そもそも結界術ではないので「彌虚葛籠」は対象をとれずに空振りする、という流れになっています。

領域展開には

 

 ステップ①:結界術で空間を分断
 ステップ②:①で分断した空間内に生得領域を具現化
 ステップ③:②に(必殺の)術式を付与→術式を発動

 

の3つのステップが必要だと説明しましたが、171話での解説により、伏黒は

 

 ステップ①:結界術で空間を分断

  ⇒結界術が未取得のため、できていない

 ステップ③:②に(必殺の)術式を付与→術式を発動

  ⇒結界ができていないので、結界に必中の術式が付与されていない

 

3つのステップのうち2つも「できていない」ということが判明しました。

 

つまり現時点で、伏黒の領域展開は

 

 ステップ②:①で分断した空間内に 生得領域を具現化

 

のみを実行している、ということになります。

 

しかし伏黒の領域展開は、領域展開の効果として

 

 ①:環境要因によるステータス上昇

 

を持っています。

ここから、「①:環境要因によるステータス上昇」の「環境要因」は「生得領域」である、ということが分かります。

 

伏黒の領域の異常性

未完成の領域

未完成の領域というと、少年院と八十八橋の特級呪霊も展開していました。

しかしこの2つは両方とも、

 

 ステップ①:結界術で空間を分断
 ステップ②:①で分断した空間内に生得領域を具現化

 

は実行されており、ステップ③の「必中の術式の付与」がされていない、というものです。

伏黒のステップ②のみの領域展開よりもよほど出来が良いものでしょう。

しかし伏黒の領域展開は、八十八橋の特級呪霊のものを、領域の上書きをしないまま圧倒します。
八十八橋での伏黒の領域展開は、足下に影が広がるのみで、特級呪霊の生得領域が背景に残っているままです。

本来の領域の押し合いでは、勝ったほうの領域で負けたほうの領域が完全に上書きされる、というのは五条VS漏瑚で描かれています。

 

領域の綱引きで必中を消せる

「生得領域の具現化」しか行っていない伏黒の領域展開ですが、「領域展開」扱いにはなっているようで、陀艮戦では陀艮の領域展開「蕩薀平線」の必中効果を無効にしています。

 

陀艮:

「死累累湧軍」……この領域内での必中効果が消えている!!
あの少年領域を展開している!!
今私と彼は領域の綱引きをしている状態!!
改めて必中効果を得るにはまずは彼の領域を潰さねばならないというわけか!!

――呪術廻戦 109話より

五条悟:

領域に対する最も有効な手段 こっちも領域を展開する
同時に領域が展開された時より洗練された術がその場を制するんだ
相性とか呪力量にもよるけど

――呪術廻戦 15話より

 

陀艮の領域は結界で閉じており、必中の術式「死累累湧軍」が付与されていますが、伏黒の未完成の結界になってすらいない領域展開で必中効果が消されてしまっています

同じく必中効果を消す「彌虚葛籠」や「簡易領域」と違って「結界術」が完成されていないのに、必中が消せるのです。

 

結界を閉じない領域

「結界を閉じずに生得領域のみ具現化する」というのは宿儺の「伏魔御廚子」もそうです。

少年院の特級呪霊に対して領域展開を発動した際は、八十八橋の伏黒と同じように、「特級呪霊の生得領域(巨大な人工建造物の空間)を背景に残したまま、伏魔御廚子の門をその上に重ねて具現化」しています。

未完成の領域と完成され洗練された領域という大きな差はあれど、背景の描写は一致しています。

「伏魔御廚子」の場合は、デフォルトでの効果範囲は推定で球状、つまり“帳”等の結界術と同じ範囲になっています。

 

必中効果範囲は最大半径約200mに及ぶ
伏黒恵への影響を考慮し 効果範囲を半径140m地上のみに絞る

――呪術廻戦 119話より

 

なのでイメージ的には「結界を閉じないまま、任意の範囲に自在に生得領域を具現化させて術式を付与している」ということでしょうか。

このことを考えると、「領域展開」の3ステップではまず「結界で空間を分断」しますが、術式の付与は結界を対象にするものではなく「生得領域」を対象として行われるものになります。

「伏魔御廚子」のたとえで使われている絵画で説明すると、

 

 ステップ①:結界術で空間を分断

  =キャンパスを用意する

 ステップ②:①で分断した空間内に生得領域を具現化

  =絵を描く

 ステップ③:②に(必殺の)術式を付与→術式を発動

  =書いた絵に術式を付与

 

になるでしょうか。

「伏魔御廚子」は空に絵を書いていますので、「キャンパスに書いてあるものを一時的に無効にする」効果を持った「彌虚葛籠」や「簡易領域」では無効化できない…ということになってしまいました。最悪ですね。

 

影=生得領域?

話を伏黒に戻しましょう。

ここまで当たり前のように「伏黒は生得領域の具現化のみを行っている」とか書きましたが、そうなると伏黒の影=生得領域になってしまいます。

 

伏黒恵:

影の奥行きを全て吐き出す…
具体的なアウトラインは後回し 呪力を練ったそばから押し出していけ

――呪術廻戦 58話より

 

伏黒がやっているのは上記の通り「影を押し出して広げている」だけになります。しかも「嵌合暗翳庭」は現時点で十種影法術を拡張し、潜在能力を120%引き出すためのものにすぎません。

伏黒が影に呪具を収納する能力は常時発動です。伏黒が気絶しても、式神は術式が解けますが、収納していた呪具が出てきたりするということはありません。

つまり伏黒は自身の影の範囲だけ、常に生得領域を結界で分断しないまま具現化している可能性があるのではないでしょうか?

 

「オマエあの時何故逃げた」

こう考えると、宿儺が少年院で伏黒に投げかけた言葉の理由が見えてきます。

 

両面宿儺:

オマエあの時 何故逃げた

宝の持ち腐れだな

――呪術廻戦 9話より

 

伏黒が影の収納能力に気づいた(=十種影法術を拡張した)とき、伏黒が初めて領域展開したときにも思い出された宿儺のセリフです。

宿儺は伏黒が常に生得領域を結界で分断しないまま具現化しているということに9話の時点で気づいていて、特級呪霊の未完成の領域に対抗できたということを指して「何故逃げた」と言ったのではないでしょうか?

それが果たして宿儺の目的とどう繋がるかは未だ分かりませんが…。

 

最後に

171話の発売前から私は「伏黒は結界術を苦手としているのに、結界術を前提としている領域展開をしている」ことに目をつけていました。

なので以上の考察は、その点が特異であるということを前提にしています。

 

「彌虚葛籠」や「簡易領域」は術式そのものを中和することはできない
これらは術式の付与された結界を中和することで
付与された術式の必中効果を無効化している
体育館の空間を自らの領域として転用することで無理矢理閉ざした結界には
必中の術式は付与されておらず
「嵌合暗翳庭」は現時点で十種影法術を拡張し 潜在能力を120%引き出すためのものにすぎない

――呪術廻戦 171話より

 

171話のこの解説は「伏黒は無理やり結界を閉ざしており(結界術を行使しており)、必中の術式を付与できていないだけである」という読み方もできると思います。

「結界に必中が付与されてないんだから、効果のない結界を中和しても意味ないよね」という解釈ですね。

なので冒頭の「自分の解釈が正解だと断言できないな…」という発言に繋がります。

今後伏黒が結界を完成させて必中の術式を付与し、正規の領域展開を習得するのか、あるいは結界術を使えないまま領域展開を完成させてしまうのか、どちらの可能性もありえると思います。

どちらになるかを楽しみにしながら、呪術廻戦を楽しんでいきたいと思います!

…次は「呪術廻戦において結界術が難しくて使い手が少ない」ということを広めるための考察を書きたいです。

 

【追記】書きました↓

hitotonoya.hatenablog.com

hitotonoya.hatenablog.com