令和に突然逆転裁判に再燃し、逆転裁判123、456をスイッチで買ってプレイしまくっている夏です。
逆転裁判の初プレイはGBA版。3発売後に存在を知り、1からプレイして一気にハマり、蘇る逆転(DS版1)のためにDSを買いました。逆裁4のPVに胸を踊らせ、新章をワクワクしながらプレイした、あの学生時代。思い入れの強い作品です。
……まあタイトルの通り、私は見事に4をプレイしてキレて当時の2ちゃんねるに存在した大反省会スレ(実質アンチスレ)の住人になっていたんですけど!!
あれから約20年(20年?!?!?!?!)。落ち着いた今やれば逆裁4も素直に「なんだ楽しいじゃん!」とプレイできるかと思い、逆転裁判123をプレイした流れでやりました。まあ4の1話やった時点でめちゃくちゃキレたんですが…
そうしたら、当時は見えなかったこと、考えなかったことが、いろいろわかるようになったので、逆裁4を十何年ぶりにプレイしてみて、気付いたことをまとめてみました。
「法廷では証拠が全て」を否定する物語
逆転裁判、逆転裁判2、逆転裁判3(以降逆裁123)は「法廷では証拠が全て」のゲームだ。

主人公・成歩堂の原体験である学級裁判では、決定的な証拠がないのに成歩堂が犯人だと担任や同級生たちが吊るし上げる。孤独な被告人である小学四年生の成歩堂を救ったのは、その際の御剣の言葉だった。
「サイバンでモノを言うのは、証拠品だけなのだ!
その他のものはすべて、沈黙すべし!
そんなコトも知らないのか……シロウトどもめッ!」
その体験から弁護士になった成歩堂龍一の物語の根底は「法廷では証拠が全て」だというのは明らかで、その物語を追いかけてきた我々プレイヤーにとっても「逆転裁判=法廷では証拠が全て」というゲームだという認識が強い。
だが、逆裁4の2話までプレイした時点で、ぼんやりとプレイヤーである私はこう思った。
「もしかしてこの逆転裁判4とかいうゲーム、『法廷では証拠が全て』ではないゲーム?」
この気持ちは、DS版逆裁4発売直後、リアルタイムでプレイした私では抱けなかった感想だった。
逆裁123に熱中し、何度も何度も周回プレイしてセリフを覚えるレベルの異常者だった私にとって、逆転裁判というのは「法廷では証拠が全て」のゲームだったからだ。
その後3話、4話(最終話)とプレイして私は自分のこの考えが正しかったと確信した。
逆転裁判4は、「法廷では証拠が全て」を否定し、「ただ真実を追求する」ゲームだった。
被告人は無罪にしてあげたいと思わなくていい。これは被告人を無罪にするゲームではない。求めるのはただひたすらに「真実」だけなのだから。
逆裁4の批判意見として、「被告人(依頼人)を無罪にしたいと思えない」というものがある。1~4話、どの依頼人ともオドロキくんはマトモに会話しない・会話できない。4話にもなって留置所でものすごくたどたどしく被告人との会話を試みるオドロキくんの姿はもはや涙すら誘うレベルだ。
逆裁123では、成歩堂の身内が依頼人のことが多かった。親友である矢張、御剣。師匠の妹で助手である真宵ちゃん。成歩堂にとって思い入れのある存在であるあやめなど。あるいは、他人の場合でも、たとえば真宵や茜、糸鋸など成歩堂の身近な人物が「被告人を無罪にしてほしい」と強く願ってくる。プレイヤーとしては、その設定があるのでそれらのキャラクターに対して「無罪にしたい、冤罪から助けてあげたい」という感情を抱きやすくなる。
だが4での依頼人は軒並み「全く親しくない上ロクな情報提供もしてくれない」「何らかの罪をおかしている」「ウソをついている」といった有り様であり、正直印象が悪い。プレイヤーとしては「こんなやつら無罪にしてやる必要なくない?」と思ってしまうのだが、実は逆裁4は「依頼人を無罪にする」ゲームではない。
逆裁4において法廷は弁護士と検事の勝負の場ではなく、「真実」の追求の場なのだ。事件がどのようにして起こったのか。その犯人は誰なのか。その真実を追求するゲーム。なので依頼人とコミュニケーションをとる必要はないし、依頼人にオドロキくんが思い入れを抱かなくてもいい。依頼人を無罪にしたいとオドロキくんは思っていないし、依頼人を有罪にしたいと響也も思っていないのだから。
逆裁123と比較して、4では裁判の結果の無罪・有罪が非常に軽い気がする。恒例の閉廷時の「無 罪」表示で得られる爽快感が全く無い。だがこのゲームの目的を考えると、その理由にも納得がいく。何故ならこのゲームは無罪判決を勝ち取るゲームではないから。(なのでここはちゃんと、過去作にのっとらず、逆裁4のゲームシステムにあわせて演出を変えたほうが良かったのではと思った)
証拠を用いずココロを揺さぶる「みぬく」こそ4に相応しいシステム
4の批判意見、あるいは5以降でも「言いがかり」「証拠出して勝負しろ」と言われている今作初登場の目玉システムである「みぬく」についても、逆裁4が「法廷では証拠が全て」を否定する物語だと考えると、とたんにストーリーに一致したテーマ性の高いものになる。
「みぬく」は証人の「クセ」から動揺・緊張している部分を指摘し、さらなる証言を引き出す…というもので、逆裁123の「サイコロック」とは異なり証拠を必要としない。
しかもこれがサイコロックとは違い法廷の場で行われる。法廷での証拠の重要性を下げる要素になっていて、証拠至上主義だった従来の法廷パートにメスを入れる形になっている。
相手検事である響也も「みぬく」に一切の文句を言わない。「みぬく」に文句を言ってくるのは証拠で説明できない真実が暴かれるのを恐れる証人だ。
最初から最後まで「真実」だけを求める先輩・牙琉響也
御剣、狩魔親子、ゴドーといった歴代検事に比べてリアクションがとにかく薄く、やり込めた感が全くないと言われる今作のライバル検事・牙琉響也。
響也は被告人を有罪にすることに拘りが全く無い。法廷をただ「真実」を追求する場だと定義し、そのためには弁護士との協力さえ積極的に行う。(響也のこの「相手弁護士にも証拠を見せ、正々堂々と対峙する」という姿勢は4話で真犯人に利用されてしまったりもするのだが)。
「あれ? このシーン、逆裁123だと『検事にこの証拠を見せるわけにはいかない!』って出そうなものなのに、オドロキくんふつうにつきつけてるな」
「あれ? 検事側もこっちに情報ふつうにくれるな? 刑事の茜もほぼ無条件にオドロキくんに捜査させてくれるな? イトノコさんのときはこうはいかなかったのに…」
プレイしていて、こう感じるシーンが少なくなかった。
響也も逆裁4というゲームの物語・システムに一致しているキャラクターだ。逆裁4は「法廷で真実を明らかにするゲーム」だ。その思想の体現者がこの牙琉響也である。
成歩堂は弁護についてほぼアドバイスをくれない、霧人はアレ、といった状態のオドロキくんにとって、響也はライバルというよりむしろ千尋さんポジションのような、「真実」を明らかにする法廷でオドロキくんを導いてくれる先輩だ。
これは逆裁2の4話の御剣とも似たようなポジションだ。御剣は逆裁1の3話の途中から、「被告人を絶対に有罪にする」というスタイルから「真実を追求する」というスタイルに転身している。逆裁2の4話、そして4の前日譚的な部分もある「蘇る逆転(1の5話)」で行われている弁護士成歩堂と検事御剣の法廷は、だいぶオドロキくんと響也の法廷に近い。お互いは敵ではなく真実の探求者どうしであり、敵は真実を隠そうとする真犯人という形だ。
「でも御剣は2-4でも1-5でもめちゃくちゃ白目剥いて唇プルプル震わせてたよね?! 響也と何が違うんだ?!」
とよく考えると、2-4ではオバチャンや虎狼死家等の証人の予想外の言動にペースを乱されまくっていたり、1-5では「検事」に憎しみを持つ証人たち、そして巌徒の悪意に晒されまくっていたからで、弁護士の成歩堂にやり込められたからではなかったりする。
実際に響也も証人の予想外の言動に動揺したり、ダイアンや霧人からの悪意に晒されているのだが、単純に御剣のリアクションがでかいことと、響也は逆裁4の時点で法廷に立って7年…御剣(逆裁1時点で検事歴4年)の倍ほどの経験を積んだベテランだった…という話だ。
それにしても2話と4話の最後でオドロキくんの見せ場になりそうなところを全部食ってったのはちょっと…先輩ポジとしても…もうちょっとオドロキくんを立ててほしかったかもしれない…。
4話だけでなく、全体を通じて根底にあるのが「裁判員制度」
逆裁4での新要素は一般人にどのような心証を与えるか、に特化している。
メイスンシステムを使った一般人への心証コントロールも批判要素だが、逆裁4のコンセプトを考えると本気で心証コントロールをゲームシステムとして入れようとしていた可能性が高い。
ゲーム中の裁判員制度についての説明では一般人は「法律に縛られない素人」とされるが、そのぶん「良識」もあるとも言われる。法律に縛られた法廷という場所で、いかに法律に縛られない者たちに真実を見せるか。その手腕を高めていくのが逆裁4以降の逆転裁判だったのではないか。
法律に縛られないという点ではメイスンシステムの案内人である成歩堂も同じで、彼は弁護士という「法律に縛られる立場」から脱却しているため、証拠品の捏造、盗撮、メイスンシステムを通した心証操作とやりたい放題だが、これもきっと「真実」にたどり着くために必要だった。「法律に縛られないからこそたどり着ける真実」という実例を見せる立場だったのかもしれない。
ここで気になるのがこの記事冒頭にも掲載した、逆転裁判1での学級裁判での御剣のセリフ。
「サイバンでモノを言うのは、証拠品だけなのだ!
その他のものはすべて、沈黙すべし!
そんなコトも知らないのか……シロウトどもめッ!」
このセリフにも、ハッキリと書かれている。一般人は「シロウト」だと。
しかし逆裁4では、シロウトが沈黙してしまうと、真実が闇に包まれたままになってしまうシーンがいくつもあった。逆裁123で切り捨てた素人が、逆裁4では真実を明らかにするための重要な鍵になっている。逆裁123は性悪説、逆裁4は性善説をとっている真逆のゲームと考えられるかもしれない。
ラスボスが「逆裁123」の擬人化
今作のラスボス、牙琉霧人は逆転裁判123の擬人化だ。
「青いスーツ」と「ピンクのタイ」を身にまとった、「法廷では証拠が全て」を信条とする「弁護士」。

箇条書きマジックかもしれないが、霧人の特徴は逆裁123の成歩堂と区別がつかない。逆に4の成歩堂はこの特徴の全てを失っている。
この男を1話という初っ端から否定し、最終話で完膚なきまでに叩きのめす。証拠を用いず、心に訴えかけるみぬく、メイスンシステム、裁判員制度という新しいシステムで。
本来なら逆転裁判は4で過去のシステムを捨て、新しい世代のシステムをスタンダードにする計画だったのではないだろうか。
そのための牙琉検事というライバル、そのための宝月茜という刑事。布石は全部できていた、と再プレイして感じた。
まあ何故か、4の主人公であるオドロキくんではなく、「逆裁123」の主人公である成歩堂が1話でも4話でも霧人にトドメを刺す展開になっているのはちょっと…どういうこと…?!と思う。
霧人は成歩堂を失脚させた張本人のうえ、成歩堂がこの世で最も憎んでいる「裏切り」と「毒薬」コンボをキメているので、そりゃ美柳ちなみレベルで成歩堂が制裁を加えるのに違和感がないのだが、オドロキくんがかなりワリを食っているのは間違いない。
オドロキくんと霧人の間にも、師弟関係という、それこそ過去作の御剣と狩魔豪並の因縁があるのだけどオドロキくんは1話の時点でそういう「情け」よりも「真実」を優先する主人公として定義されているので、最後でも霧人の情に訴えかける戦略を当然バッサリ切って捨てている。兄弟である響也も同じくだ。
せめてメイスンシステムの現在編はオドロキくんに担当させるべきだったのではないだろうか…あれそれって逆転検事2だな…()
余談
気になったところ
なんかオドロキくん→成歩堂の信頼感が4話の探偵パートではほぼ無だった気がしたんだけどメイスンシステムから帰ってきたら成歩堂が持ってきた紙切れを法廷でつきつけるまでに信頼が回復しているような感じになっており、一体中1日で何があったんだよ…となった。
妄想
3話で警察局長の話がしばしば出るけど、「横笛が趣味」「オドロキくんの捜査に協力的」なので逆裁4全体の逆裁123への悪趣味さを考慮すると、逆裁4だけの時点の設定では、実は御剣が警察局長やってそうでは…?(御剣がフルート吹ける話は1-5初出だし、巌徒局長のセリフとか考えると御剣が同じ立場になってるのはありそう)
なるほどくんも弁護士辞めているなら、御剣も検事じゃなくなってるのほうが世代交代・アンチ逆裁123的にキレイだしね。(ただ茜ちゃんの話ぷりがちょっと違うかな~という感じがしなくはない)
少なくともあんなに意味ありげに「警察局長」の話がチラチラ出ていたのに、本人未登場のままなのはきっと続編で何か出すつもりだったんだろうなとは思う。